カテゴリ:国際人権論( 4 )   

カルデロン・ノリコさんはマニラ日本人学校へ通えるか?   

17日に両親とともにフィリピンに強制送還されるかも知れないカルデロン・ノリコさんに対して、両親が不法入国した以上、一度、母国に帰るのはやむを得ないという意見がありました。
ノリコさんが日本語で学び続けたいのなら、フィリピンの日本人学校に通えば良いのではないかという提案もありました。
そこで、マニラ日本人学校について調べてみました。

まず、入学資格。
1.マニラ日本人学校入学資格
本校は,当地に一時的に滞在する日本人子弟を対象に,日本と同等の教育を行う目的で設立され,マニラ日本人会により受益者負担で運営される比国政府より承認された在外教育施設である。
以上のような本校の性格に鑑み,以下を本校転入学の資格条件とする。
1.転入学を希望する児童生徒は,日本国籍を有していること。
2.転入学を希望する児童生徒は,日本語の読む・書く・聞く・話す等の年齢相応の能力を持っていると本校で認定され得ること。
3.転入学を希望する児童生徒は,近い将来日本に帰国し,日本の学校教育を受ける意思を持っていること。
4.転入学を希望する児童生徒は,原則として次の年齢とすること。小学校 6~12才 中学校 13~15才
5.転入学を希望する児童生徒の保護者は,原則として児童生徒と同居し,日本国籍を有すること。
6.転入学を希望する児童生徒の保護者は,本校設立の趣旨及び教育方針を理解し,本校の規則に定められた経費(寄付金,入学金,授業料等)を負担する資力があると本校で認定され得ること。
7.原則として,転入学を希望する児童生徒の保護者は,マニラ日本人会会員であること。
以上の条件を満たした上,学校長が実施する児童生徒及び保護者の面接並びに本校実施の児童生徒の筆記テストに合格すること。
なお,転入学に関するその他特別な事例については,学校運営理事会が転入学の可否を決定する。
 ※入学時(編入学時)には,国語と算数(数学)の簡単な筆記テストを行います。

ノリコさんもノリコさんの両親も日本国籍を持っていないわけですから、そもそも日本人学校には入学できないように思います。

次が入学金と学費。
寄付金 2000米ドル(20万円)
入学金 15000ペソ(3万円)
学費 月6500ペソ(1万3千円) 年間15万6千円
長期改修・修繕費 月400ペソ(800円) 年間9600円
施設費 月3200ペソ(6400円) 年間7万6800円
学童障害保健 年間300ペソ(600円)
教材費 年間3900~9480ペソ(7800円~1万8960円) 
合計は48万800円~49万1960円。

ちなみに、フィリピンの一人当たり国民総生産は2007年で1777米ドル(外務省HP)

結論的には、普通のフィリピン人家族が子どもをマニラ日本人学校に通わせることは無理だと思います。
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by fwge1820 | 2009-03-12 15:35 | 国際人権論

カルデロン・ノリコさんのケースに対する国連特別報告者の照会   

先月末より国連特別報告者がカルデロン・ノリコさんの件について、日本政府に行った照会の内容が判明したそうです。

 【ノリコ・カルデロンに関する照会
1 上記要約に主張されている事実は,正確か

2 カルデロン・ノリコ本人もしくは代理人から不服は申立てられたか?もしそうなら,本件に関して行われたと思われる何らかの調査,及び司法もしくはその他の審理の詳細を,そして可能であればその結果を教示されたい。もし審理が行われなかったならば,もしくは審理の結論が出ていないなら,その理由を説明されたい。

3 カルデロン・ノリコの教育の権利は貴政府によりどのように保障されているのか,情報を提供されたい。

4 (日本)政府は,子どもの最善の利益という法的原則の実施,ひいては少女カルデロン・ノリコが家族とともに過ごせ,学校に通い続け同世代の子ども達と社会的関係を発展させ,さらに彼女の両親の(入管法上の違法な)状態に基づいた差別から保護されるため,何らかの方策を講じたか。それらの方策の実施につき,詳細及び可能であればその結果を教示されたい。もし何の方策も採られていないなら,その理由を説明されたい。

5 日本で外国人の両親から生まれた子どもを保護するための法的枠組みにつき,情報を提供されたい。子どもの両親の入管法上の(違法な)状態を理由に適用可能な法律の違いが生じる場合は,その違いに言及されたい。】
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by fwge1820 | 2009-03-12 13:51 | 国際人権論

カルデロン家に対する特別在留許可は違法か?   

わたしに対して、10日、「偽造旅券で入国したカルデロン家の両親は、日本の法律を破ったのだから、処罰されても当然ではないか」という照会があった。

その後、気になったので、この件に関するブログ記事をいろいろと読んでみたら、この件に関する基本的な事実に対する誤解があることが分かった。

まず、カルデロン家に対して、特別在留許可を出すことは、超法規的措置ではない。
不法在留者(偽造旅券で日本に入国した人、あるいは合法的な短期滞在者と入国した後オーバーステイになってしまった人)に対する法務大臣による特別在留許可は、出入国管理および難民認定法(入管法)で定められた合法的措置である。

出入国管理および難民認定法第50条
法務大臣は、前条第三項の裁決に当たつて、異議の申出が理由がないと認める場合でも、当該容疑者が次の各号のいずれかに該当するときは、その者の在留を特別に許可することができる。
一 永住許可を受けているとき。
二 かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき。
三 人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留するものであるとき。
四 その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき。
2 前項の場合には、法務大臣は、法務省令で定めるところにより、在留期間その他必要と認める条件を附することができる。
3 第一項の許可は、前条第四項の適用については、異議の申出が理由がある旨の裁決とみなす。

つまり、不法在留が発覚し、退去強制処分が決まり、この処分に対する異議申し立てをした人で、その異議に正当な理由がないと却下された人でも、法務大臣が「特別に在留を許可すべき事情がある」と認めた場合には、在留特別許可を出すことが出来るのである。
カルデロン家の場合、不法在留が発覚し、退去強制処分が出た後、その処分撤回を求めて裁判を行い、最高裁によってその申し立てが却下されたので、法務大臣に特別在留許可を申請したのである。
つまり、これまで彼らのとった行動は合法なのである。
また、彼らは退去強制処分を申し渡された後、入管法第52条に基づいて、仮放免を申請して受理されており、したがって、現時点で彼らが日本に滞在していることも合法である。

入管法第52条第6項
入国者収容所長又は主任審査官は、前項の場合において、退去強制を受ける者を送還することができないことが明らかになつたときは、住居及び行動範囲の制限、呼出に対する出頭の義務その他必要と認める条件を附して、その者を放免することができる。

すると、次に、当然のこととして、入管法はなぜ法務大臣に対して、不法在留外国人に対して特別在留を許可する権限を与えているのだろうかという疑問が湧く。
そんな法律があるから、犯罪者が日本に居残ってしまうのだ、という疑問は誰でも持つだろう。

先日、わたしに連絡してきた方も同じような質問をされていた。
ここで考えなければならないのは、いかなる法律、制度にも不備があるということである。
もし、カルデロン家の両親が日本に入国して直ぐに偽造旅券であることが発覚し、帰国させられていれば、今回のようなケースが発生することはそもそも無かったのである。
あるいは、フィリピンを出国する段階で、偽造旅券では出国できない制度が確立されていれば、今回のようなケースは発生しなかったのだ。
しかし、1990年代初めの日本では、きちんとした外国人受入れ政策が確立しておらず、高度な技能を有する外国人のみを受け入れるという基本方針が堅持される一方で、3Kと呼ばれる単純労働をしてくれる労働者が国内で不足し、そのためにきちんとした制度を設けることなく、なし崩し的に外国人を受け入れてきたという現実がある。
この外国人受入れ政策が実態にそぐわないことは、井口泰関西学院大学教授、伊藤元重東大教授も指摘していて、わたしが参加した2007年春の経団連主催の国際シンポジウムでも、経済界のリーダーたちは単純労働も含む外国人受入れが必要であると明言していた。
こうした制度上、政策上の不備から、今回のカルデロン家のようなケースが生れたのである。
そういう意味では、カルデロン家は日本の政治的・行政的対応の遅れ、不備の犠牲者なのである。
そして、法務大臣による特別在留許可制度は、カルデロン家のような形式的には法律に違反しているが、「特別の事情」があると認められる人を救済する制度なのだ。

しかし、それでも、カルデロン家に特別在留を許可したら、似たようなケースにも許可をしなければならなくなり、日本には不法外国人が溢れてしまうのではないかという懸念を持つ人々はいるだろうと思う。

これまで、カルデロン家のようなケースで特別在留許可が認められている事例はいくつかあり、それらによると、両親、子どもとも不法在留となっていても、両親が10年以上犯罪歴無しに日本できちんと働いていて、子どもが中学生以上となっている場合には、特別在留許可が出ていることが多いようである。

したがって、今回のカルデロン家のケースにおける唯一のポイントは、カルデロン家の不法在留が発覚した時点、ノリコさんは11歳であったことにある。
その後、退去強制処分の撤回を求めて最高裁まで争い、最高裁で判決が確定した後、入管法に則り、特別在留許可の申請を行なっている間にノリコさんは13歳になった。
法務省は、もし、カルデロン家に対して特別在留許可を出した場合、類似の家族で裁判や特別在留許可申請手続きを取る間に子どもが中学生以上となってしまったケースにも特別在留許可を出さざるを得なくなるのではないかと懸念しているのである。

法的ないし制度的に見ると、カルデロン家のケースは、子どもが10歳以上である場合にも特別在留許可を認めるかどうかという事例であるということになる。
そして、この判断は法務大臣の裁量なので、法務大臣の判断に基づきカルデロン家に対して特別在留許可を出した場合、その行為は、日本国の法律上、完全に合法的な措置である。

したがって、最後の論点は、おそらく、カルデロン家に対して特別在留許可を認めた場合、同じような形で日本に滞在しようとする不法在留外国人が増えるのではないかという懸念である。
この点については、先ず、現在、日本にいる不法在留外国人(11万3072人)のうち、日本滞在が10年を超え、その子どもが小学校高学年に達している家族がどの程度いるのか、正確な数字を日本政府は出すべきではないか。
私の知り合いの弁護士は、カルデロン家のようなケースは全国で100件前後ではないかと話していた。
数百人の、勤勉で、真面目で、地域社会にも溶け込んだ外国人家族を退去強制処分にすることが、日本社会の治安を守る上で、どの程度有効なのか、私達は冷静に判断する必要があると思う。
また、政府は、そのような議論、判断を国民一人ひとりが出来るように、きちんとした情報を提供すべきなのではないか。

なお、カルデロン家の母親に犯罪歴があることが、今回、特別在留許可を出せない理由であると法務省は説明しているが、この犯罪歴とは、不法入国に対する処罰で2006年9月28日にさいたま地方裁判所で下された懲役2年6カ月、執行猶予4年の実刑判決を受けたことを指しているもので、その他の犯罪歴は全くない。
わたしに照会をしてきた方が言っていた「犯罪者は罰を受けるのが当然」という論理に基づけば、カルデロン家の母親はすでに処罰を受けているのである。
さらに、カルデロン家の母親は2003年、父親は2005年に在日フィリピン大使館から本人名義の旅券の交付を受けている。ノリコさんも2006年に本人名義の合法的な旅券を在日フィリピン大使館より交付されている。

昨今の不況で、感情的な外国人排斥の気運が日本社会にも見られるのだけど、日本人は本来、心の温かい、ホスピタリティに富んだ国民として世界に知られてきた。
この評判、信頼こそ、日本の財産である。

「君子は豹変する」という格言もある。
森法務大臣の勇断を期待したい。
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by fwge1820 | 2009-03-12 09:54 | 国際人権論

カルデロン・ノリコさん一家について   

昨日(9日)、東京入管に出掛けた。
カルデロン一家のご両親が出頭されるということで、この問題の支援者である私も同行したという次第。

私は今、東工大や東洋大学での教員としての仕事のかたわら、セーブザチルドレン・ジャパンのチャイルドライツセンター部長代行をパートタイムで務めている。

もともと、日本ユニセフ協会で子どもの権利に関するアドボカシー活動に携わっていたし、大学院での博士号申請論文のテーマも「現代多文化社会の下での人権の普遍性の様態」みたいなことだったので、外国籍の子どもの人権には以前からずっと関心があった。

先月、ジュネーブの国連人権高等弁務官事務所の知り合いから、カルデロンさん一家のことがBBCでニュースになっているので、情報を提供してもらいたいと頼まれ、この問題を担当されている渡邉章吾弁護士に連絡を取り、いただいた情報方を国連人権高等弁務官事務所に送ったのが、この問題に関わることになったきっかけ。

その後、国連人権高等弁務官事務所を通じて、2人の国連特別報告者が本件に関わることになり、現在、日本政府に対して情報提供を求めていると聞いている。

昨日、カルデロンさんのお父さんが収容され、お母さんだけが仮放免になり、学校を早退してきたノリコさんと東京地裁内にある司法記者クラブで渡邉章吾弁護士と3人で記者会見に臨んだ。
「家族3人で、日本で暮らし、勉強を続けたい」とノリコさんははっきりと発言していた。

「国連子どもの権利条約」は、子どもの最善の利益、非差別の原則、生存と発達の権利、そして意見表明権をその基本原則として掲げている。
これらの基本原則は、日本国憲法における基本的人権の尊重のようなもので、改正したり、留保したりしてはいけないものである。

日本政府は、しかし、両親ないし片方の親が強制退去処分になった場合、子どもの最善の利益は適用されないという解釈宣言を「国連子どもの権利条約」第9条1項について行なっていて、国連子どもの権利委員会から繰り返し、その撤回を勧告されている。

私の視点から見ると、これまでの法務省、そして最高裁の判決は、この解釈宣言を容認した、その範囲内での議論なので、そもそも、再考が必要なものである。
そして、その観点から、現在、国連特別報告者が介入しているのだと理解している。

確かに、外国人の入国ないし在留許可は各国政府の裁量事項であることは国際法の大原則である。
しかし、この原則を確認した最高裁のマクリーン判決は、今日のように多数の国際人権条約が成立する以前のものであって、その後の国際人権条約その他の制度の発展の結果、国家といえでも、これらの国際人権条約によって一定の制約を受けるという国際的な新たな動きを全く無視することは出来なくなっている。

今回の日本政府の決定は、このあたりに対する考慮が十分ではないのではないかと私は考えている。

日本は国連人権理事会の理事国でもある。
しかも、昨年のG8サミットではホスト国を務めた、世界のリーダー国の一つでもある。
そういう立場を踏まえて、カルデロン一家の問題にも対処してもらいたいと私は考えている。
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by fwge1820 | 2009-03-10 07:56 | 国際人権論