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アマルティア・センの理論   

アマルテイィア・セン(Amartya Sen)
1933年生まれの経済学・哲学者で、社会的選択の理論、厚生経済学、開発経済学、所得分配、公共的選択および哲学の分野で多大の研究を発表している 。

機能(functioning)と潜在能力(capability)
個人の福祉(well-being)=生活の良さ
生活=相互に関連した「機能」の集合
機能=ある状態になったり、何かをすること
潜在能力=ひとが行うことが出来る様々な「機能」の集合=様々な生活を送る個人の自由を反映した機能のベクトルの集合=個人の福祉に直接価値のある機能を達成する自由を反映したもの
→個人の主体的自由を個人の福祉の度合を評価する際に明示的に考慮できる出来る理論的枠組

エイジェンシー理論
センは、人が自分自身の福祉(well-being)以外の価値や目的を持つ存在であり、これを「(人の)エイジェンシーとしての側面」と呼び、「福祉の側面」と区別し、一人の人をいずれかの側面に限定してしまうことは出来ないとする 。
「エイジェンシーとしての達成」とは、その人が追求する理由のある価値や目的を実現することであり、必ずしもその人自身の福祉と直接結びついているものではない。
「エイジェンシーとしての達成」は、さらに「実現されたエイジェンシーの成功(realized agency success)」と「手段としてのエイジェンシーの成功(instrumental agency success)」に区別することができる。前者は、エイジェンシーとして有する価値や目的の実現を指し、その人が、その実現にいかなる役割を果たしたか、とは関係がない。後者は、逆に、その実現にあたって、その個人がいかなる役割を果たしか、ということ自体を問題とする。例えば、母国の独立または飢餓の除去について、これらの目的が実現された場合、前者の意味での成功と評価し得る。一方、「手段としてのエイジェンシーの成功」と評価し得るか否かは、その人がいかなる役割を果たしたか、に拠る。
この二つの「成功」の区別は、「自由」の観念と深く関係している。ここで、センは、「コントロールとしての自由」と「有効な自由」を区別する。「コントロールの自由」とは、「手段としてのエイジェンシーの成功」にのみ関係する。つまり、ある目的を実現するために、その人自身が積極的な役割を果たすということを可能とするのが「コントロールの自由」であり、この場合、「実現された成功」という、もっと広い観点から見た「有効な自由」は問題とはならない。例えば、校正者が作者の校正刷りをチェックする場合、校正者が作者の意図の範囲内で校正作業を行っている限り、作者の「コントロールの自由」は限定されても、「有効な自由」は損なわれてはいないのである。
つまり、センは、エイジェンシーを個人が重要と考える目標や価値を実現する能力と考えて、その能力と自由の関連性を論じているのである。
センのエイジェンシー論は、目標や価値を持ち、その実現を目指す存在としての人の側面に焦点を当てたものなのである。

【参考文献】
アマルティア・セン、鈴村興太郎訳『福祉の経済学』(岩波書店、1998年)
Amartya Sen, Inequality Reexamined, Oxford University Press, 1992. 池本幸生・野上裕生・佐藤仁訳『不平等の再検討』(岩波書店、1999年)

by fwge1820 | 2006-05-20 10:16 | 東洋大学

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